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プロローグ:侵入者達の叫び声

始まりは電車の中でした。

松戸から西荻窪のアパートへの帰宅途中、もしくは出勤前の乗車中だったかもしれません。入口ではない中の長椅子の真ん中あたりの空いた席に座り、普段通りの通勤電車の中で揺られていました。入口近くに立っていた中年の男性が突然、誰も相手がいないのに車内によく聞こえるような大き目の声で、罵声を上げました。内容までは覚えていません、ただその時覚えているのは、その男性が何か叫ぶように言葉を口にした後、すぐ両脇に座っていた乗客が自分に少し寄るような、どことなくかばうような感じに座り直したことそれだけです。
私も内容を記憶していないくらいなので、その時は特別何があったという思いも残りませんでした、ただ少し変な人がいる、怖いなと思った程度です。
都会というのは往々にしてそのような事が起こるものなので特別気にも留めませんでした。

次はバスでした。西荻窪のアパートから駅へ向かうバスの中で、中年の女性が、大き目の声で「一匹オオカミでは仕事も上手くいかない」というような内容のことをしゃべっていました。
私はこの時期、アパレル企業のデザイナーズアシスタントという仕事をしており、何となく自分の事を言われたような気がしてその言葉を記憶しました。というのも私は当時、念願の仕事に就けたまでは良かったものの、行き詰まりを感じていたからです。

私の就職したアパレル会社はデザイン企画に関する一切を一人のデザイナーさんが担当されており、私が就職した当時はそれほど自社ブラントに力を入れておられませんでした。しかしながら面接で私がデザイナー志望であること、デザイン画を持ち込んだことなどを気に留めていただけていたようで、最初は販売から入ったもののサブ店長としての業績を認めていただけて、デザイナーさんのアシスタントとして起用してもらえることになりました。同時にプレスルームが立ち上がり、企画担当の3人のうちの一人として参加しました。

しかしながら、自分が思っていたほどは働けていませんでした。早く実績を作りたいと焦っていたのもあります。自身の高校時代からの夢でもある既製服デザイナーに一歩近づけたと気持ちも高ぶっていたし、あと少しで夢が叶うという過剰な期待が自分の先の人生にありました。
上がってきたサンプルの採寸を任せていただいたり、スカート、カーディガンなど何点か洋服の修正から店舗に並ぶまでの洋服制作を任せていただけることもありました。過剰な「もっと思った通りの服を作りたい」という気持ちが先走り、それが焦りにもなっていました。1年で結果を出せなかったらまた売り場に戻ることになっていたからです。試験的な試みでした。
ずっと一人でサンプル修正をしていらっしゃったデザイナーさんが、突然アシスタントと言って何もかも初めての社員がやって来たってやっぱり使い辛かったのでしょう。1/4パターンもひけたし採寸も出来たけど、やっぱり自分で測るのと他人が測るのでは見るポイントも違ったことでしょう、何度か任せてはいただいたけれどそれが生きていたのかは分かりません。

通常業務と言っても何か特別に任されていた訳でもありませんので、自分で出来ることを探そうと他のブランドの店舗周り、一つの商品のカラーバリエーションを何度も何度も店をまわって記録としてまとめたり、売れた品番のニットやスカートの採寸をさせてもらいに自社の店舗のバックヤードを借りて入り浸らせてもらったりと自分で出来ることを探しました。一週間他ブランドを回ってまとめた記録を自分なりにまとめてファイルにし、見てもらいました。それも効果的に役立っていたとも自分では思えません。もしかしたら企画室でじっと座っていた方が何かさせてもらえたのかもしれません。一人はバイヤーのおじさんで、一人はサンプル修正を主な仕事としたデザイナーさんです。お互いに初めての仕事で、きっとどう使っていいのか、またどう使われるべきなのか、分からないままに時間が流れました。私は外回りにあちこちの店舗を回るのに、電車に乗る機会が増えました。変化が起こったのはそんな中でした。

その頃、販売時代の店長から紹介していただいた男性とお付き合いすることになり、何度か会うようになりました。かなり古い記憶なのでもしかしたら聞き間違いかもしれませんが、環状線の電車の中で高校生くらいの男の子が、「お前なんかなぁ、ものすごい好かれてメロメロになるか、怖くなって逃げ出すかのどっちかなんだよ!」と叫ぶように言った声が聞こえました。ここで変化が置きました、私が何故かこれも自分の事を言われたんじゃないかという気持ちになって混乱し、どういう事だろうかと頭の中だけで冷静さを失いました、別に表向きは普通に立っているだけですあくまでも心の中だけで、そしたらその男性の知り合いだったのか何なのか、今でも分かりませんが女子高生の女の子の声が「やばい、取られる」とつぶやきました。それからです、私は表向きは何の変化もないけど、意識と外界が繋がってしまったような感じで、心の中で電車の中の会話に反応するようになっていきました、しかもそれは段々と頻繁に、エスカレートするようになっていきました。

何店舗もある自社販売店舗の、店長代理として渋谷パルコに出勤することが多くありました。その他にも店長が急に休みになったり、催事のイベントを仕切ったりでフレキシブルに販売業務にも加わりました。そうして勤務し生活している中でも意識の混乱は収まらず、意識の変化というか、頭がおかしくなっているということをバイヤーのおじさんに相談することにしました。
するとバイヤーさんはそういうことはこういう仕事をしているとよくなる、と言ってすぐにクリニックに電話を入れてくださいました、行っておいでと促され、とても安心したのを覚えています。やっぱり相談して良かったと思いました、これで直るかもしれないと思いました。

頭の中が、外の会話を拾って反応してしまうからと言って、実質的な問題はそれほど、その時にはありませんでした。全て私の勘違いかもしれない、むしろ過剰に反応して他者を不用意に責めることで、心の中だけで自分の勘違いかもしれないのに、自分の事を言っているわけではないのにと、後で考え直すと結果的に強い罪悪感に苛まれることになりました。

クリニックの医師に相談すると、「大丈夫、治るよ」と言ってもらえました。脳のある部分が過剰に反応しやすくなっているのを抑える効果があるからと飲み薬を処方されました。少し眠くなるかもしれない、意識がぼんやりとするかもしれないということで寝る前に飲みました、確かに何か、頭のある部分が塞がれるような感じで、効いているのかなと思いましたし飲むことで対策を講じているという安心もありました。

最初に診察いただいた先生は若い方だったのですが、3回目の診察の時は先生がお休みで、代わりに中年の男性の先生が担当してくださいました。一通り話をして、電車に乗っていると見ず知らずの他人から絡まれるような気がすること、それに反応して、もしくは対抗しないように意識を集中しなくてはならないことなど話すとそうですかという対応で同じ薬を出しておくと言って診察が終わりました、けれどその先生は私が立ち上がって部屋を後にする時、「やばい奴が来た」と言うような言葉を口にしました。そこからさらに意識の混乱は激しくなっていきました。

その時に、「やっぱりそうなんだ!!」と意識を改めました、やっぱりこの感情の混乱は、自分だけが原因で起こってることじゃないんだって。やっぱり見ず知らずの他人は、私に向かってそれとは分からないように嫌がらせというか、干渉をしてきているんだ、それは間違いないことなんだ、私はそう思いました。

確かに、見るモノ聞こえる言葉外界のあらゆるモノに、その頃には過剰に反応するようになっていたと思います、そうでなくても、私に対する投げかけでなくても、本当に全く関係のない言葉もあったと思います。だけど私にはそれが私に対するものかそうでないものか、冷静に立ち止まって考え直す余裕は全くありませんでした、渋谷駅の柱のあちこちに貼ってあった「キモエ」というよく分からないたらこ唇の変なキャラクターに悪意を感じたりしました、その時の私は、悪意を拾うというか、確かに過剰に悪いイメージに反応してしまうようにはなっていたと思います。

電車の中で、座っているとすぐそばの中年の女性が何か寄り添うような「大変ね可哀想ね」というような労わりの言葉を口にしました。私が特に反応も見せないと「ひねくれている可愛くない」というようなネガティブな言葉に変わりました。私はただ、どうして関わってくるんだと心の中で叫びました、私に出来ることは私に対する干渉の一切を無視すること、それだけでした。私には私の人生があって、自分なりに工夫して出来る限りのことをやっている、放っておいてくれと思いました。どうしてこれほどに自分に他者が関わって来ようとするのか、もうやめてくれと思いました。とにかく干渉されていると感じるいかなる言葉にも反応しないよう、出来る限り無視しようと努めました。それは出来ることもあり、時にはカンに触るモノ言いに腹が立って過剰に反応し、出来ない時もありました。

渋谷の通りを、通行人を割って通り抜ける時、男性が「突き抜けろ」と短く言ったのを耳にとめたことがあります。それはまだ、意識の変化が起こる少し前でした。もちろん聞き間違いかと思って特別何とも思いませんでしたが、後になって考えてみると私に言われたのかもしれないと思い直しました。

駅中のどんぶり屋さんで、中学生か高校生か分からないくらいの子達が近くに座っていて、「話しかけたら、応えてくれるかも」と言ったのが耳に入ったのも、意識の変化が起こるずっと前です。「これは何だろうな」と気に留まる言葉が、それまで無かったわけでもありません。だからこその確信でもありました。やっぱり私の意識は外界と繋がってしまっているんだって。

どんな事があっても前向きに頑張ろうと、気持ちを入れ替えた時に「そんなの嘘だよ」と言われる事もありました。前を向こうと自分を励ます時、「そう来たか」という言葉が聞こえたり。少しおかしくなっていたのもあります何処までが本当にあった言葉で、どこまでが自分の空想だったのか、証明する方法は何一つありません。ただその時私が何度も自分に言い聞かせたのは、この意識の変化は現実に反映させるべき事実なんかじゃない、頭の中だけの話なんて、何処へ出す必要もない、それが良かろうと悪かろうと、何の意味もない、ただ無視さえしていれば、日常生活に何のほころびもない、そう言い聞かせて毎日を乗り切りました。どれだけ混乱しようと、これはあくまでも私の頭の中だけ。現実というか、実態の自分はいつもと何の変化もありませんでした。表向きはただ日々の仕事をして帰って寝る、以前と特別な変化もない自分でした。

けれどある時を境に私の心はさらなる混乱を引き起こすようになりました。それは私が、外界のあらゆる言葉を追い出せた、と思った瞬間のことでした。

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