君までの18cm(仮)

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まだあらすじです。一部も全部もコピー、転写不可。

Reach to your eyes 君まであと18cm(仮)

空中遊泳の足場。決して何処にも定まらず、ゴンドラは揺れている。
ガラスの表面を平行に撫で降りる2つのワイパー。並んで作業を続ける彼らの動作はほぼ同じ動きで、透明な壁をスルスルと撫でては泡を切り、また撫でては水を切る。遠目に見ると二人はまるで、ダンスを踊っているようだ。彼らの動きに無駄は無く、一言も言葉を交わし合うことなしに、次のステップをリズム良く踏んでいる。

片方が腕を空に向かってかざすと「オーライ」の掛け声と共にゴンドラが一つ下の四角へとゆっくりと移動し、二人は再びほぼ同じ動作で窓の表面を撫でつけていく。
右腕をスライド、手首をスナップ、またスライド、スナップ
ここでステップ。

AM11時、その時窓の内側は朝の定例会議中だった。会議を滞りなく終えると午後から予報では雨が降るはずの、雲一つない青空を一人の青年が見上げていた。そこへゴンドラが降りてきて、彼はそれを眩しそうに見上げたけれど、ゴンドラの中の2人の作業員は窓の内側を一瞥することもなく規則的な動作で作業を進めていく。

千載 轢(センザイ レキ)は窓ガラスを何度も何度も撫でては泡を切り、撫でては水を切るという一連の作業を続けている。ビル内の社員達が外で作業する自分達を気にかけることはあっても、清掃中の彼らが中の人々を注視することはほぼない。レキはガラスの表面だけをじっと見つめ続ける、そこに泡残りや水の切り残しがないように。
クレーンを使った大がかりな窓清掃は連携で行う為、ペアを組む相手と息を合わせながら抜かりのない仕事をこなしかつ時間を切り詰めなくてはいけない。太陽が地平線の下へ隠れてしまうより早く完了させなければいけない仕事だ。いつもより集中力を要する作業を、レキは淡々と、黙々と続けていった。

その日の作業が予定通り夕暮れ前に終了し、仲間と一緒に社用車へそれぞれ乗り込んだところで、小振りの作業用バッグを無くしていることに気付いたレキは忘れ物をしたからと言って車に乗らずにビル内をしばらく歩きまわることになった。
ビルの屋上、ゴンドラ付近、駐車場、休憩に入ったビル内のお手洗いまでくまなく見て回ったが見当たらない。次第にビル内を歩き回る社員の数が減り、レキが非常階段入り口前の小さな窓を気になってさっと拭いたのを思い出しそこで作業バッグを見つけた時には誰とも人とすれ違わなかった。

ビル付近の大通りのバス停でレキが待っていると雨が降りだした。最初は小振りで、次第にじっとりと中粒の雨が降り注ぎ、レキは傘を買うまいか、コンビニは見当たらないかと道路を見渡したがそれらしい建物は目に入らない。3年前は雨に当たらなかったしそのまま仲間と一緒に職場へ戻ったからこの界隈の地理には詳しくない。レキは腕時計と時間表を見つめ、あと5分もすれば来るかもしれないとそのままそこに立ち続けた。

降られるままに待っていると傘をさしたスーツの男性が一人現れてレキの隣に立った。

(邪魔だな)
レキの右肩上、頭部より少し下辺りに傘の淵が広がっている。レキは濡れた自分の髪や服が素肌に一部張り付く不快感もあって、隣りに並んだスーツ姿の男性に内心悪態をついた。180cmという高身長のレキと比較すると隣に立った男性の背丈は明らかに低い。彼の傘が集めた大粒の雫がボタボタとレキの足元に落ちて跳ねた。

「入りますか?」
傘の淵を少し上に傾けて、背の低い青年がレキに声をかけた。レキは「いいです、別に」と言って一度断った。するとその青年が、「うちの会社の窓の、清掃員の方ですよね」と話を続けた。

「少しの間だって思ってるかもしれないけど、いつ来るか分かりませんよ。ここのバスって10分20分、酷い時は30分くらい遅れて来ますし」
青年はそう言うと、彼が手に持っていた傘の柄をレキに向けて掲げた。レキはそれを聞くと小さく頭を下げ、レキの方が背が高いので彼から傘を預かった。

(断る理由もないし、濡れない方が良いっちゃ良いし)
レキは何も言わないまま、彼の傘に半分ずつ入ってバスを待った。青年もレキと並んで立ちながら黙っていた。

早くバスが来ないものかと見知らぬ相手と傘を分けながらレキは状況を気まずく思った。職場の仲間とも私語を交わさず深く関わろうとしない彼にとって、初対面の相手との相合傘で共有する時間はひどく居心地の悪いものだった。

暗がりの中に2つのヘッドライトが速度を落として二人の前に近づき、停車した。
(10分程度、じゃないか)
レキは腕時計を確認した後で、青年の背丈に合わせるように身を傾け、「けっこう早く来ましたね」と言いながら傘を彼に渡そうとした。

そのタイミングで、青年の両腕がレキの首の後ろにまわった。
レキは彼の腕の重みで傘を右手に持ちながらさらに身を低くした。

青年はつま先を立て背伸びをしてレキの顔を自分に引き寄せた。反動で互いの顔が接近し、しかしながらレキが反射的に首の後ろに力を入れ踏みとどまったので頭をぶつけあう事はなかったけれど互いの唇がごく軽く触れ合ってしまった。

レキは驚きに体を傾けたまま固まった。青年は慌てたように腕をレキから放して「ご、ごめんなさい!」と言った後、傘を持たないまま開いたドアの中に乗り込んだ。レキがじっと動かないでいるのでしばらく開いていたドアが閉まりそのままレキを残してバスは行ってしまった。

(は??)
レキは固まったままの体勢で混乱する頭を整理しようとしたが上手くいかない。唇が触れてしまった2人の姿はバスに天頂を向けて傾いた傘の中に隠れてバス側からは見えていなかった。レキの頭の中は見知らぬ男性に突然キスをされたことを何とか収まりの良い場所に置いてしまいたかったのだがしばらくは上手くいかなかった。次のバスを待って、電車に揺られている間もレキの頭の中は混乱の最中だった。

自宅のアパートへ戻り濡れた洋服を脱いで直ぐにシャワーをすませると混乱していた頭は幾分落ち着いてきた。コンビニエンスストアで購入したお弁当とドリンクをテーブルに並べて口を動かしていると、ふいに思い出したくもない過去の自分を回想してしまう。こんな風に見知らぬ他人から体に触れられることも、今の職場に付いてから随分長い間、無かったのに。

「この制服もどうせ、盗んできたヤツなんだろ、引っぺがしてやろうぜ」
「ほら、泣けよゴミ!」
「もうやめときなよぉーー、あっ、ほら先生走って来た!」
両腕をかかえられ上着を脱がされると、腹を殴られる。痣の上に出来る新しい痣、鈍感になってしまった痛み。

玄関を見やるとバス停から持ち歩くことになってしまった青に近い藍色の傘がコンクリートの床に雫の濡れシミを作っている。傘の柄は黄味の強いブラウンで自然素材のままの凹凸があり、ビニル傘の5倍以上は値がしそうなその品の良い傘は見慣れた粗野な背景にそぐわず居心地が悪そうだ。レキは仕事と雨を浴びて疲労した体の重みを、ベッドのマットレスの厚みにゆだねた。

(あいつらは)
レキはベッドの上で布団をかぶり、目を閉じた。回想の中の、両腕の自由を奪われ複数の生徒から殴られる中学時代のあの時の自分も、彼らを前に同じようにただ目を閉じた。
(悦ぶんだ、オレが止めてくれって、泣いて懇願すると)

両親共にDVの気があり、小学高学年の時にはどれだけ暴力を受けても泣いたり喚いたりしなくなっていた。自立するまで、レキは公言出来ないような方法で金を手に入れるしかなかった。今の職場を紹介してくれたのも、オレを気に入って金で買ってくれた偉い人だった。おおよそ人間らしい生活が送れるようになったのも、自分で生活を工面出来るようになったのも、今の職場があってこそだ。オレには職場に返しきれないほどの恩がある。

目を閉じたまま眠りに入るまで、玄関に置かれたままの傘のことを考えていた。あの青年はレキが窓の清掃員であることを知っていたので、現在自社が清掃担当しているビル内の社員なのは間違いない。あのビルは定期的にうちの清掃会社に依託してくれる顧客会社なので、問題が起こった時には顧客を解消されてしまうに違いない、そうなったら申し訳が立たない。そのように考えるとレキは焦りと不安で眠れなくなりそうだった。
(早いうちに、借りた傘を返しに行かないと。職場に迷惑がかかるのだけは困る)
レキはシフトが休みの明日のうちに始末を付けておこうと考えながら、心身共に疲労に押され深く眠った。




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